戦史叢書「陸軍航空作戦基盤の建設運用」 [軍事]
図書館で借りているこの本をパラパラと読んでますが、非常に面白いですね。
題名からは何を扱っている本なのかよく判りませんが、陸軍航空隊の後方支援体制の設立や経緯とかが中心です。
飛行場設営、補給体制、航空機整備体制、航空通信網(有線&無線)の構築と運用、本土から戦場への航空機輸送、早期警戒網構築、搭乗員健康維持、輸送機運用体制、気象予報体制などまさに後方支援全般が書かれています。
類書がほとんど無いこともあり、非常に面白いですね。
幾つか思ったこと。
・日本陸軍航空隊は創立から終焉まで「本土から戦場への航空機輸送」に悩まされた空軍だったのですね。
・ドイツ空軍にとってルフトハンザ、ソ連空軍にとってアエロフロートが極めて重要な存在であったのと同様に、日本陸軍航空隊にとって民間航空の全日本航空・満州航空・中華航空が航空輸送などで非常に繋がりが強いです。
・太平洋戦争初期の陸軍の定期輸送航空路は、福岡がハブ空港として南方及び中国からの航空路がここに集まってます。
・開戦直前で爆撃隊用の誘導ビーコンとかを南方とかに配備してるのは驚きました(開戦には間に合いませんでしたが)
日本の航空部隊ってそういうのを使うイメージが無いんで。
・しかし日本陸軍航空隊って、下手な他国の空軍よりもきちんと「独立空軍」してます。
陸軍士官学校とは別に航空士官学校があるなど、人事的にも独立してますし。
日本陸軍は大真面目に空軍を独立させるつもりだったのがよく判ります。
・満州事変終了直後に、日本陸軍航空隊は極東ソ連空軍に対する航空撃滅戦計画を早速策定してます。制空権の奪取は地上戦の勝利に必須ですから。
こういうところとかが普通に「独立空軍」してますよねえ。
・相次ぐ戦いで搭乗員が衰弱して航空疲労に陥って、使い物にならなくなっても、最後までロクな対策を取れなかったことを赤裸々にかつ具体的に書いてます。
戦争末期の士気低下についても遠慮無しです。
・戦闘疲労した搭乗員に睡眠薬投与したら効果があったとか、搭乗員の戦場神経症対応のために精神科医を戦場に派遣したりもしてます。
・戦史叢書は「公式戦史」なので、日本軍側の失敗については官僚的作文でオブラートに包まれて書かれることが多いですが、この「陸軍航空作戦基盤の建設運用」は自分たち陸軍航空隊の作戦基盤整備がどれだけダメダメだったかを遠慮無しに書きまくってます。
特に最後の「むすび」とか、ここまで書いて良いの?と思ったくらい。
・一番ラストのページにある
「極度の航空疲労に陥り、無気力化した操縦者等を「卑怯者」あるいは「気違い」扱いをする空気が、我が軍に存在した」
という記述が、旧日本陸軍航空隊の航空勤務者がどれだけ悲惨な状態にあったかを良く表しているかと。
かなり面白いので、もう一度読み直してみようかと思います。
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