このジャンルでは間違いなく日本一ですが、濃すぎて読み切れてません [軍事]
普墺戦争、普仏戦争にわたるドイツ帝国勃興期の戦争を解説してますが、繰り返しますが、あまりにも内容が濃すぎます。私も全部まだ読み切れてません。内容が濃すぎて、少し前に戻って再読とか何回かやってもいますし。
この内容を日本語で説明している資料は他に存在しないことは確定で、このジャンルにおいて日本一であることは誰も文句が無いでしょう。
(というか、このレベルが他に有ってたまるか、というレベル)
ここまで長いにも関わらず、まだ話がパリ・コミューン登場まで行ってないのが何とも。
軍の編成マニアや末期戦マニアにも、ビシビシ届く描写ばかりで、第453話普仏戦争/仏東部軍の誕生 で書かれているパリ包囲後に新編成されたフランス東部軍の編制が、
「独公式戦史では東部軍の兵員数について「連隊の歩兵大隊数、騎兵中隊数、砲兵中隊の砲数などは実態不明」とし、更に「指揮官についても任命あっても赴任していない者もあり諸説あるので疑問ある場合にはXを付す」となっています。ここでもそれに従います。指揮官の階級にしても戦時昇進が乱発され「自称」もあり、殆どが1から3階級上になっていると思われます。」
と書かれてて、アレすぎます。
当時の出版物からの戦争についてのカラーイラストとかも、毎回多数掲載されていて、どっからこんなの拾ってきてるんだ、と感嘆します。
あとフランス第二帝政の軍事に関するいい加減っぷりが、読んでて欝になってきますね。こんなんじゃ、当時の極東での戊辰戦争での外交戦でフランスが勝てなかったのも納得します。
反対にバラバラの国家群だったドイツ帝国が戦争で肩を並べて戦ううちに、「ドイツ帝国」としての連帯感が出てくるのも熱いです。
素晴らしい資料ではありますが、読むには気合が要りすぎるので、無条件にお薦めが出来ません。
高砂義勇兵について決定版の書籍 [軍事]
台湾先住民で編成された、その部隊は、日本人兵士の個人的回想群では自軍の精鋭として「畏敬」を持って語られていますが、断片的な資料は多数存在しても、包括的な資料としては、彼らが「何者?」という資料はほとんど無いです。
この本は恐らく初めての包括的な資料で、編成元となった台湾先住民の解説、誕生経緯や悲惨な戦闘、戦後の経緯までが一括で書かれていて、「高砂義勇兵が知りたければ、この本を読め」という決定版です。
戦中に地獄を見たのに、戦後に台湾を領有した国民政府に徴兵されて大陸の国共内戦に投入されて,共産側の捕虜になって、文化大革命で総括されまくったという悲惨な人生を送った人もいます。
良い本が出ました。
インドの軍事力近代化 その歴史と展望 [軍事]
インド軍の歴史及び現状についての本で、現在、他に日本語の類書はありません。
最初に言っておくと、この本は非常に読みにくくて理解もしずらいです。
原著がそうだったのかもしれませんが、地図とか政府組織の編成図がほとんど掲載されてなくて、インドについての詳しい地理知識がない読者にとっては何が何やら。
読むときには、ネットでインドの地図とかを検索しつつ、読んだほうが良いでしょう。
さて、日本のミリオタの間では、インドの兵器開発期間である国防研究開発機構(DRDO)は、主力戦車アージュンの開発大遅延(ニコニコ大百科で、その迷走は詳しいです)とかで、そのダメダメっぷりがネタにされることが多いですが、この本でもDRDOへのdisっぷりが激しいです。
「50年にも及ぶその歴史の中で、主要兵器をただの一つも各軍に供給できてない」
とまで書かれてます。
開発できたのは、せいぜいサブシステム程度とのことで。
DRDOの権限は、
「DRDO長官は国外調達に対して拒否権を発動できる地位にある。多くの場合、DRDOは現実性のない国産化を進めるものの、それが出来ず兵器を供給できないことが判明するまで海外調達が控えられる」
とか非常に強力ですが、こんな強力な権限持ってる兵器開発機関あっても、インドは世界有数の兵器輸入国だったりする訳で。
インド軍の兵器調達関連は、DRDOに限らず、腐敗爆発しまくりで自浄能力も無いようです。
あと読んでて、ぼそぼそと出てくる記述が、他国の軍隊との常識とかけ離れてる事例があって、「え?」と思ったり。
例えば、21世紀に入って、インド陸軍は対テロ用にクシャトリヤ・ライフル部隊という対テロ部隊を既存編成の範囲内でパートタイム的に編成したら、機甲、砲兵、高射砲兵等も定期的に配属されてしまうので全軍が歩兵化してしまい、専門職の基幹人員が枯渇して大変なことになってる、という記述があって、どうすんだコレと感じたり。
軍隊よりも人数と組織数が多い準軍事組織についての解説も多いです。
けど、インドの殆どの州警察は大隊編成の武装集団保有してるけど、その装備は一部のテロが多い州以外は19世紀のリーエンフィールド小銃で、テロが多い州の装備が良い部隊も、弾薬がまともに補給されないのに、AK47装備のテロ組織と銃撃戦やらされてるとか、悲惨な事例も沢山書かれてます。
それと、記載されているインドの準軍事組織も組織数が多すぎて、読んでて意味が判りません。
全般的には、現代インド軍についての類書は他にないですが、ネットとかで関連情報を検索しながらでないと読みずらい本です。
これ日本語に翻訳するだけでも非常に大変だったんじゃ?と思いますし。
いや、インド軍の全般的状況や、断片的に語られてるエピソードとか興味深いものが沢山あって、非常に勿体ないとは思うのですが。
コバニ包囲戦でのトルコ軍戦車部隊 [軍事]
最近がレミリアは世界を旅するようですが毎日楽しみすぎですが、2/9投稿分のレミリアVSエヴァンジェリン戦が捧腹絶倒で爆笑しすぎて腹が痛いです。
こんなカオスな会話を思いつける著者の頭の中は狂ってます(褒め言葉)
さて、またもやコバニ包囲戦ネタですが、コバニはシリアとトルコの国境の街であるのにも関わらず、トルコはイラクからのクルド武装勢力が援軍に行くのを認めただけで、直接的な軍事介入はしてないとされてます。
ただ、Fears of massacre as Isis tanks lead assault on Kurdish bastion のイラストで、コバニ包囲戦では攻めるISIL側が30~50両の捕獲したM1エイブラムスやロシア製戦車をコバニへの直接砲撃支援に実戦投入してる最中に、その至近距離のトルコ国境側でトルコ軍戦車隊が臨戦態勢で警戒してたのですね。
トルコとシリアの国境の町なコバニ包囲戦で、ISILが間違ってトルコ領内を砲撃してしまったら、トルコ国境ギリギリで警戒中のトルコ軍戦車が即座に反撃したでしょうから、かなりISIL側は神経使ったのではないかと。
コバニ包囲戦で戦ったのはクルド人部隊と有志連合の航空支援だけでトルコ軍は参加してない、と文字記述だけではそうなりますが、
「コバニ近くのトルコ国境線ギリギリに、トルコ軍戦車部隊をシリア側から見えるように展開」
してただけでも、ISIL側には強烈な圧力で、十分トルコもクルド側の戦争に協力してると言えます。
あと人口数十万の街コバニは激しい戦闘で無人の廃墟と化しましたが、住人はほとんど難民としてトルコの逃れたわけで、トルコがきちんと受け入れてるわけですね。
しかし、これまで戦争ばかりのクルドとトルコ軍が協力して共通の敵に立ち向かうとは。
あと、上から目線ですが何故にISILはコバニへの強襲続けたんでしょうね。
国境のトルコ軍が怪しい動きしてて、国境まで攻めきるのが難しいことは早いうちで判ってた筈なのに、他の戦線に戦力転換せずに、結局敗北してしまった訳で。他戦線とか政治的問題もあるので外からは判りませんが。
コバニ包囲戦でのUAV [軍事]
英語版ウィキペディアによると、ISIL側は2機のUAVを投入して、クルド人側に2機とも撃墜されたと書かれてますが、一体の何のUAVかと思ったら、日本でも販売されてるDJI社のPhantom 2ですか。
Anche l’ISIS utilizza droni DJI Phantom 2 -VIDEOに、撃墜されたPhantom 2の写真とか載ってます。
Phantom 2で撮影した廃墟と化したコバニの街の空撮映像とかもあって、今の地上戦はUAV無いと成り立たない、というのが良く実感できたり。
敗戦時の証券取引所停止 [軍事]
つまり現地の金融業界では、まだアサド政権の信用はあるんでしょうね。
そんなわけでWW2の敗戦国では証券取引所がいつまで機能してたか知りたくなったので調べてみると、まず日本の証券取引所は長崎原爆投下を理由として1945年8月10日に停止してます。
8月10日は「ポツダム宣言受諾」の話が密かに出てきた日ですので、本当の理由はそっちかもしれませんが、それでも長崎原爆投下は機密情報を知らない金融関係者にも「日本はもう終わりだ」と納得できる出来事だったのでしょう。
一方のナチスドイツ滅亡時は中央資本市場としてのベルリン証券取引所-生成から崩壊への過程(PDF)のP27によれば、1944年くらいには爆撃等で取引開催が大変になり、フランクフルト証券取引所が1945年2月23日が最後、ベルリン証券取引所が1945年4月18日に全取引停止。
米軍によるフランクフルト陥落は1945年3月末ですが、その一か月前ぐらいから、ドイツ西部では金融取引とかが不可能状況になってたのが判ります。
ベルリンの取引停止はソ連軍市街突入寸前なので、まだ流石は首都というべきでしょうか。
あとベルリンの大銀行が1945年2月くらいから本部を移転し始めてて、そのぐらいから金融機関はナチスを見捨ててるのが判ったり。
他の国の敗北時の証券取引所閉鎖とか調べてみたら面白そうです。
証券取引が出来ないくらいの敗北になったのはいつか?とか判りそうですし。
捕虜になったイスラム国戦闘員の処遇(想像) [軍事]
カリフ再興に沸き立つ人々のまとめにある通り、イスラム国の首領バグダーディがカリフ即位を宣言した際、ネットの一部では盛り上がりましたが、この頃はまだ一般には知られておらず、これがまだ3か月半前の出来事というのも信じがたいです。
さて、地上戦闘が行われた場合、勝敗に関係なく、絶対に捕虜が発生しますが、敵に捕まったイスラム国の捕虜って碌な扱い受けてない気がします。
理由として、イスラム国って文字通り全世界から戦闘員集めてるので捕虜になったら、本来の母国に強制送還とかの問題が大々的な国際的ニュースになると思うのですが、そんなニュースが無いという事は、テロリストとして「その場で消されてる」のでは無いかと。
第二次大戦時にも。連合軍の捕虜になったナチスドイツの武装SSが、その場で殺される事例が多発しましたが、今のイスラム国戦闘員は下手すると、それ以下の状況な可能性も。
もっとも私は「捕虜についての報道が無い」という状況証拠だけで、これを連想してるので、実は周辺各勢力がきちんとイスラム国捕虜を処遇してます、という話なら「ごめんなさい」するしかないですが、真偽不明ながらイラク軍に捕まったイスラム国の捕虜が吊るされた、とかの噂とか聞くと、ありえそうな気が。
実際、そこらへんどうなってるんでしょうね。
ただ、イスラム国側も奴隷制とか堂々と宣言してる以上、自分たちが捕まえた捕虜をまともに処遇してない訳で地獄です。
ジープ3台でビルマ全域補給責任者が補給にやってきた [軍事]
この本は旧日本陸軍で太平洋戦争中に戦死した将官たちについての本です。
各々の将軍の戦死までの経歴や、戦死状況とかが書かれててます。
この中の高田清秀少将(昭和20年5月19日戦死)の項目で知ったのですが、この人はインパール作戦時の補給まとめてる第5野戦輸送司令部のトップで、作戦中にビルマ方面軍兵站監に就任してビルマ全体の補給トップになって、そのまま戦死です。
で、この高田清秀少将がビルマ方面軍兵站監に就任したころに、独断撤退寸前の第31師団司令部に、自ら物資を積んだ鹵獲ジープ3台で乗り付けて、師団長とも直接面会して慰労品とか渡したとの記述が。
(ビルマ方面軍兵站監就任には日付の混乱があったらしく、戦史叢書ではこの時の肩書はまだ第5野戦輸送司令官とされているとか)
インパール作戦補給取りまとめどころかビルマ全体の補給まで任されて忙しすぎる筈の、高田清秀少将が自ら鹵獲ジープ3台で第31師団司令部に行かなくてはならなかったということは、補給部隊側では第31師団の動きがやばい、と認識してたということでしょうね。
この高田清秀少将は、輜重兵科ながら陸士恩賜で陸大出で、結局、最期は方面軍兵站監としてエナンジョン油田に派遣されていた技術者等の非戦闘員をとりまとめて撤退中に、イラワジ川周辺で戦死です。
ビルマの輜重部隊トップな方面軍兵站監という職務上、真っ先に後方に撤退しても誰も文句は言わないでしょうに、インパール作戦で敗北寸前の第31師団を訪ねたり、民間人を保護して撤退したりで「現場の人」だっただろうな、と思いました。
ビルマの日本軍はエナンジョン油田を持っていたので、石油の補給に困らず、消耗した師団を緊急に自動車輸送したり、自動車化が進んでるのですが、エナンジョン油田そのものにビルマ方面軍兵站監が居たことから、その重要性が判ります
この本に記載されている将官の戦死状況は、
「中国戦線で戦死だけど、当日その戦区は平穏だったはずで戦死状況の記録も残ってない」
「ホロ島守備の独立第55独立混成旅団長の鈴木鉄三少将の戦死時は、モロ族ゲリラから逃亡中にろくな診断もせず病死と判断したが埋葬も出来ず、そのまま捨てた(この旅団の戦記は 最悪の玉砕戦場~独立混成第五五旅団(菅)戦記ぐらいしかネットでは見かけません)
とか、華々しい戦死はこれっぽちもなくて、輸送中に海没、敗走中の惨めな戦死、玉砕戦場で戦死状況不明等ろくでもない死に様ばかりです
軍刀は切削工具(対象は人体) [軍事]
この本は旧海軍の舞鶴海軍工廠の開闢から廃止までの関係者の証言をまとめた本です。
題名にもあるとおり、機関等を担当する造機部が主ではありますが、他の件も結構載ってたり。
切迫した艦船緊急修理の修羅場や敗戦後の後始末もかなり詳しいです。
大戦末期の末期戦描写も沢山で、昭和20年に舞鶴造機部に「軍刀の緊急生産」命令が降ってきた時、担当部員が
「軍刀は武器の一種だからスジとしては造兵部の所掌ではなかろうか」
「しかし、軍刀も一種の切削工具と考えれば、切削物は金属ではなく人体そのものだけど、切削工程には金属切削工具と共通する面がある。したがって造機部所掌でもおかしくない」
と考えて、無理やり納得してるのに「もう、ダメだ」感を受けたり。
本全体の雰囲気としては「出来の良い市町村史」と同じような感じで面白いです。
後方なので戦死とかの凄惨な描写も少ないですし。
このソヴィエトの旗を撃てるのか?! [軍事]
http://www.bbc.com/news/world-europe-26440426
クリミアの問題で、ウクライナ空軍将兵がロシア軍らしき「謎の武装集団」に占領されたウクライナ空軍基地の、装備が無事かチェックさせろ、と乗りこんで認められるBBCの映像ですが、32秒位から、ウクライナ軍兵士が
「これは生中継だ! 俺達にはアメリカと国際社会が付いているんだからな!」
という感じに叫んでる英語字幕が、あまりにもカッコ悪すぎるのに衝撃。
それからすぐにウクライナ空軍部隊を率いていた将校が、「黙れ、黙れ」と部下を黙らせるのですが、その直後に長いバージョンの映像では、ウクライナ空軍将校が、ウクライナ国旗とともに掲げてる赤い軍旗を指さして、
「お前ら、このソヴィエトの旗を撃てるのか?!」
という感じの英語字幕が入ってるのにも驚きました。
速水螺旋人センセによると、この軍旗は第二次大戦も戦った戦闘機部隊の記念軍旗のようですが、ソ連が滅んでも、旧構成国での内戦時に、お互いに戦闘停止できるだけの権威が、旧ソ連軍旗にまだあるのですね。