日本本土決戦 知られざる国民義勇戦闘隊の全貌 [購入物全般]
終戦間際に本土決戦時に備えるための国民根こそぎ動員な国民義勇戦闘隊について、軍事的や制度的方面から解説してる本です。
終戦間近の強制動員問題は、どうしても敗北寸前の日本が沢山やらかした政治思想問題や戦争犯罪に関わってくるので、ややこしいですが、プロローグで
「そっち方面に興味がある奴は、こんな本読まずに別の本読め」(意訳)
と書いてるとおりのスタンスです。
しかし、下手に戦争犯罪とか思想とか絡めるより、法令とか編成とかを並べてる方が、当時の狂気が伝わってる気がします。
あと私は「国民義勇隊」と「国民義勇戦闘隊」の違いを、この本で初めて知ったぐらいのレベルの知識でしたが十分楽しめました。
(「国民義勇隊」が職域や地域で全員参加な準軍事団体で、「国民義勇戦闘隊」は「国民義勇隊」を戦闘部隊の体裁を整えるために多少の再編成等を行った民兵部隊、という感じです。乱暴に言うと)
あと読んでて、幾つか思ったことを。
・この本の白眉の一つは第6部「国民義勇戦闘隊のマニュアルと武器」の第2章「国民義勇戦闘隊の武器」です。
本土決戦目指して、ダメダメな兵器ばかりで、簡易国民小銃とか簡易国民拳銃とか簡易投擲器(弓)とか、木棒に鉄釘50本打ち付けた打撃棒甲とか、普通の竹槍な竹槍甲とか、竹槍に鉄釘30本付けた竹槍乙とか憂鬱なのが写真付で紹介されてます。
この本の前半は様々な本土決戦抗戦組織の編成経緯や法令制定などが多くて、読みにくい人もいるかも知れませんが、そういう人は第2章から読めばいいかと。
私は法令関係も面白く読めましたが、そんな人ばかりではないですし。
第6部「国民義勇戦闘隊のマニュアルと武器」の第1章「3つの戦闘マニュアル」の方も、白兵戦闘や爆雷抱えて対戦車飛び込みとかばっかりで憂鬱です。
・昭和19年12月に第一陸軍技術研究所で実施された簡易投擲器の長弓、短弓、弩弓甲、弩弓乙の実射試験の詳細が頭痛します。
犬相手に弓の実射試験もやってて、鏃ごとの射撃試験で犬の体を「貫通」とかの記録が表になってたり。
・国民義勇戦闘隊だけではなく、少年農兵隊、特設警備隊とかの末期日本の国民防衛組織群についても詳しいです。
元々「国民戦闘義勇隊」の母体となった「国民義勇隊」は内務省主導で編成された組織で隊長が地域の名士、副隊長が在郷軍人な事が多かった、というだけで、トラブルが多数あった事が想像できます。
あと全ての都道府県ごとの国民義勇隊編成経緯も載ってます。
中央省庁も省ごとに国民義勇隊化されてて、大蔵省や内務省の国民義勇隊としての組織編成も載ってて、当時の官公庁組織をそのまま流用してるので、当時の官公庁組織の概要も判ったり
・掲載されてた中で、一番絶望的な単語は各種学校が学徒隊に編成された時に、盲聾唖学校で編成された盲聾唖学校学徒隊です。
どうすんですか、これ。
・結局、ダメダメすぎる国民義勇戦闘隊が地上戦やる羽目にならなくて、ホント良かったですが、樺太ではソ連軍相手に実戦やってます。結果はお察しで。
とにかく他に類書が存在しないジャンルなので、日本の本土決戦準備のグダグダを知りたい人なら問答無用で購入すべきかと。
自分としては読んでて「うわあ狂ってる」という憂鬱な感情と、最貧部隊マニアとしての「うほっ、こんな最貧部隊があったなんて!」という知識を得た時の面白さの感情が両立してて、妙な気分になりました。
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