「独善的な正義」の滑稽さ [やる夫系紹介]
遅ればせながら、やる夫安価スレの 【安価】やる夫は命を的に稼ぐようです‘68【越南】を読み終わりました。
いやあ、すごい作品でした。
どういう話かの紹介は、やる夫wikiでの紹介を見ていただくとして、簡単に言うと1968年1月のサイゴンを舞台としたバトルロイヤル的なデスゲームです。
で、この作品の凄いところは中盤のとある偶発的イベントをキッカケに主人公が「彼自身だけの正義」に本格的に狂い、善役っぽいキャラも悪役っぽいキャラも関係なしに、主人公の独善的な「正義」の前に蹂躙されます。
主人公の正義や誠実さは「彼が心の中で仲間だと認めている数人の仲間」だけに適用されるもので、それ以外のキャラは第三者からの目から見て裏切りや汚い行動に見えようと、彼だけの正義に基づいて、ぶち殺していきます。
もう、殺された奴らが可哀想とかの感情置いといて、乾いた笑いしか出てきません。
彼の正義がどういう正義かというと、南ベトナム軍のスパイとしてベトコンに潜入してて、そのせいでベトコンの仲間が死んだのではないか葛藤してる仲間を、
「スパイ? 裏切り? 大いに結構! 助けてくれた恩人のために働いたんだよ。 何を恥じることがあるだろうか?」
「世のため、人のために汚名を覚悟して行ったことが悪だと言われるなら、世界の方こそ間違っている。 」
とか言って励まし、自分自身もその言葉の通り、外道な行動をして、他人から大量の殺人等を責められても、
「自分は平凡な日本のサラリーマンだ!。何故そんな事を言われるのだ」
と自分の正しさを疑わず大真面目で抗議するような感じです。
なんで、こんな展開になってしまうかはネタバレなので言えませんが、「た、大尉~!」とだけ。
舞台が1968年1月サイゴンでテト攻勢の頃なので、話の終盤はテト攻勢真っ盛りで、キャラ達の争いもグダグダになってきて、もう展開が予想付けられません。
あと中盤以降の投下のたびに初めに書かれる「今までのあらすじ」が、
「主人公の主観からは間違ってないけど、第3者の目からは突っ込みだらけ」
で笑いが。
もう、この作品は「独善的な正義」の滑稽さとかをここまで描いてしまっただけで伝説に残りそうです。
最初のスタートアップは少し緩めですが、カン・ユーと出会ったあたりからのジェットコースター展開には引き込まれるでしょう。人は選ぶでしょうが。
最近はやる夫が人生でいいじゃないでまとめられ始めたので、そちらを読んでいくのが良いかと。
一応、前作として【安価】やる夫は命を的に稼ぐようですがありますが、ゲームや世界設定以外は全くキャラ等の繋がりありませんので、読む必要はないと思います。
前作も面白いですし、読んでると、今作と前作の主人公サイドの行動のあまりの違いに驚くしかないですが。
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