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中国が89式120ミリ対戦車自走砲を装備した理由 [軍事]

 中国人民解放軍には今時89式120ミリ対戦車自走砲(参考)という兵器が装備され、牽引式の対戦車砲も装備されていますが、2ch軍事板の【アジア】中国・99式戦車【最強】スレにあった中国軍の120ミリ対戦車砲の開発経緯の記事が面白かったので長いですが、丸ごと転載します。
 このスレは他の内容も面白いです。
 実際、この日本において中国人民解放軍の兵器開発について、まじめに語っているところすくないですからねえ。
 個人的には中国の通常兵器開発はぼちぼちロシアを超えると思ってます。
 それが意味あることかどうかは別ですが。
 今のアメリカ軍の兵器体系は「良い兵器」とかをとっくに超越した情報化や無人兵器化に進んでいるので土俵が違いますから。

122 :名無し三等兵:2009/03/29(日) 10:25:27 ID:???
中国の戦車砲開発史に関する記事(以前別のスレにUpしたがDat落ちし
ているので改めて紹介。)

中国120mm滑腔砲開発史

記事全文。ただし写真の多くは関係ない。
ttp://blog.sina.com.cn/s/blog_4b3a43170100bhvy.html
(内容は上と同じで雑誌の写真があり。下のアドレスを見る場合は
ポップアップに注意して下さい。)
http://blog.sina.com.cn/s/blog_4b3a43170100bhvy.html

元は、『現代兵器』2008年6~7月号に掲載
1970年代~1990年代初めにかけての120mm戦車砲/対戦車砲の開発史。
これほど詳細な記述が明らかになったのは初めてであろう。

内容摘要
・1997年、58口径120mm滑腔砲による射撃試験を実施。RHA数百mmの複合
装甲ブロックを貫通。砲弾は120mmⅡ型タングステン合金APFSDSで、89式
120mm対戦車自走砲用に開発された物。弾薬重量7.4kg、装薬込みの全備
重量11.5kg、試射時の平均初速1859m/s、火砲平均とう圧490Mpa、砲口と
う圧12MJ、射程2000mで700mm貫通可能。

120mm滑腔砲開発史
1969年の中ソ国境紛争でT-62を捕獲した事が起源。100mm滑腔対戦車砲
や100mm滑腔砲を搭載した69-1式戦車、120mm滑腔砲(老120)を搭載した
WZ-112戦車が開発される。ただし、これらの装備が実用化することにはソ連
ではT-72が登場しており、対抗は困難。そのため1976年から改めてT-72を
撃破可能な新型戦車砲/対戦車砲が開発される事になる。

WZ-112の120mm滑腔砲(老120)は、比較的とう圧が低く、砲身も薄く作られ
ている。試験では、老120のタングステン合金APFSDS(侵徹体は短い)は初
速1650m/sで204mmの均質鋼板を貫通した。

123 :名無し三等兵:2009/03/29(日) 10:27:20 ID:???
続き
・中国ではT-72の正面装甲の強度に関する情報を収集し、装甲モジュール
(681複合標的。)を開発した。老120では貫通が困難である事が判明しており
開発目標としては、1500mでで681目標を貫通可能な能力が求められた。

・まず戦車砲の開発が開始。681目標を貫通するには初速1800m/s、老120
の旧式APFSDSを使用した場合には2000m/sの初速が必要である事が判
明。そのため、新型砲弾と戦車砲双方の開発が必要とされた。

・1970年代末の中国の砲技術ではとう圧400Mpaを実現していたが、同時
期の西側120mm滑腔砲では540~630Mpaを実現していた。120mm砲開
発陣では、新型砲ではとう圧の目標として第一目標431Mpa、第二目標
539Mpaを達成する事を決めた。

・とう圧を上げるには、装薬増加、砲身長延長、装薬密度上昇、口径Upな
どの方法がある。ただし、いずれも一長一短があり、無理は利かない。新
型戦車砲では、最終的に装薬エネルギー110×104MJ/kg、装薬量13.08kg
、砲身長6m、口径120mmとする事が決められた。装薬量としては、当初14
kg以上が必要とされたが、人力装填の限界として13kg代に抑えられた。
口径としては120mmと130mmの2つが候補とされた。120mmでは 初速1727
m/s、130mmでは同1762m/s。ただし130mm砲では砲身重量が180kg増加
し、弾薬が大型化すること、砲の反動が大きくなりすぎる
などの難点があり、120mmとする事が決められた。

124 :名無し三等兵:2009/03/29(日) 10:28:56 ID:???
続き
・その後、第2世代戦車への搭載を前提として、要目の修正が行われ、装
薬エネルギー107×104Mpa、砲身長5.75m(48口径)、装薬重量16.1kgと
された。120mm砲のサイズは全長6600mm、砲身長5750mm、砲尾サイズ
530mm×530mm×540mm、復座器1000mm砲耳幅540mm。

砲身の製造には中国で初めて自緊製造方式が採用。砲弾は半燃焼薬筒
を採用。APFSDS弾は68度に傾斜した681目標を1500mの距離で貫通可
能、侵徹体は30cm×3cm、HE弾は40cm×4cm、発射速度6発/分、俯仰
角-6~18度、運用可能温度-40~50度、砲身は砲塔を吊り上げずに換装
可能。

・1979年2月19日に最初の試射が実施。8月には681目標を1646m/sで貫
通に成功。120mm砲の実用化の目処が立つ。APFSDS弾の開発ではタ
ングステン60%の合金で侵徹体は重量4.45kg、全長/直径比14:1。1981年
の試験では、平均初速1700m/s、4800mの距離でT-72の正面装甲を貫通
可能であるとの結果がでた。ただし、開発経費の不足から1982年以降、開
発スピードは緩やかになった。

戦車の砲塔内部の狭い容積では、大柄な120mm砲弾(直径185mm、全長
700mm、重量9.4kg、装薬の重量は16kg)を扱うのは困難があり、大量の装
薬燃焼による砲身内部の腐食問題も生じていた。

120mm砲については、上記の問題から開発が難航していたが、同時期に西
側から105mmライフル砲とAPFSDS弾の技術が伝来し、120mm砲を搭載し
た第二世代戦車(1224型戦車や1226型戦車)の開発は中止され、59/69式
戦車に105mm砲を搭載するプランが進められる事になった。

この120mm砲の開発で得られた技術は、ソ連式の125mm滑腔砲のコピー
生産において大いに活かされる事になった。1984年には125mm砲の生産
に成功した。

125 :名無し三等兵:2009/03/29(日) 10:29:56 ID:???
120mm滑腔砲(高とう圧滑腔戦車砲)の性能

口径:120mm、弾種:APFSDS、貫通力:204mm(68度)複合装甲、150mm(65
度)均質鋼板を3000mで貫通可能。、初速1698m/s、とう圧:常温465Mpa、高
温553Mpa、後座力:562kn、俯仰角-8~18度、砲身長5.75m(48口径)、火砲
重量3t、射撃距離2000m

第二部、120mm対戦車砲開発~89式120mm自走対戦車砲

・120mm対戦車砲の開発は120mm戦車砲と同じ19789年に決定されていたが戦
車砲開発にリソースを回すために開発は進んでいなかった

・戦車砲の開発が頓挫した1984年に、対戦車砲の開発が本格的に開始。

・当初は62式軽戦車(WZ-131)に120mm砲を搭載する計画であったが、反動を
抑えきれないとして、WZ-321共通装甲シャーシに搭載することに変更。WZ-321
は83式152mm自走榴弾砲や89式122mm自走ロケットにも使用されており砲兵
部隊でシャーシを共用することで整備面で有利。120mm砲の反動にも耐えら
れると判断された。

自走対戦車砲の120mm砲はその口径を、戦車砲の48口径から52口径に延長。
1984年12月には試作車両の試射が開始。120mm砲の初速は1740m/s、距離
1000mで400mmの均質鋼板を貫通可能。120mm自走対戦車砲の設計は1987
年に終了、1990年に「89式120mm自走対戦車砲」として正式採用された。

126 :名無し三等兵:2009/03/29(日) 10:31:56 ID:???
続き
・89式120mm自走対戦車砲の試作車両の砲塔の装甲圧は前面18mm、そ
の他15mm、車体10mmの装甲鋼板。量産型では砲塔高を低くして正面投
影面積を減らす努力が行われている。

・89式の射撃統制装置は79式戦車と同じ。夜間暗視装置は当初搭載さ
れておらず、後に微光増幅式暗視装置が搭載された。

APFSDS弾としては侵徹体が比較的短い120mmⅠ型が当初使用されていた
が89式専用の砲弾として侵徹体を延長した120mmⅡ型タングステン合金
APFSDS(重量7.55kg、全長直径比20:1、装薬重量12kg)弾が実用化された。
120mmⅡ型では2000mで550mmの均質鋼板を貫通可能。その後、1990年代
になるとさらに貫通力を強化した120mmⅢ型APFSDS弾が開発されている。

ただし、89式の120mm砲弾は人力装填するには重量が重くなりすぎていた。
また89式は待ち伏せ運用が基本で、射撃後にはすばやく陣地移動をする
ことが求められていた。そのため半自動装填装置が開発されることになっ
た。発射速度は、3発/20秒、持続時間6~8発/分。砲塔後部の半自動装填
装置にはAPFSDS弾7発/榴弾3発が搭載されている。

・89式対戦車自走砲は、ソ連戦車部隊を迎え討つために開発された。運
用としては、集団軍の機械化歩兵師団所属の重対戦車砲連隊の予備部
隊として配備され、脅威の高い地域への緊急派遣用に使用される。

127 :名無し三等兵:2009/03/29(日) 10:32:58 ID:???
ただし、冷戦が終結し極東ソ連軍の脅威が消滅した事を受けて、北方の重
装備機械化歩兵部隊への配備に留められた。89式の派生型は開発されて
いないが、今後20年間は使用される見通し。

120mm砲の開発により、中国は先進国との技術格差を20年から10年程度
に縮める事に成功した。ただし、戦車砲としては105mmライフル砲、ソ連系
の125mm滑腔砲が採用され、120mm砲は戦車砲としては実現しなかった。
要因としては、狭い車内では砲弾+装薬一体式の120mm砲では運用が難
しいこと、高いとう圧による砲身内部腐食などの問題を解決できなかったこ
とがある。

125mm滑腔砲は1990年代当初は2000mで460mmの貫通力しか得られず、
巨額の費用を投じて90年代後半に十分な貫通力を得ることに成功 した。

~120mm砲の開発が残した教訓~
①上部機関の一貫した開発方針の指示が必要。
 120mm砲の開発は方針が二転三転し、開発の難航を招いた

②まず、武器装備の要目を決め、開始後は一人の設計主任をおくべき、
 120mm砲の開発では、主任技師が何度も代わり、其のつどスタッフも
 変動し、開発の挫折の一要因となった

128 :名無し三等兵:2009/03/29(日) 10:34:08 ID:???
③武器の開発方針は明確に示されねばならず、決定後は容易に変更しない
 120mm砲の開発では何度も開発目標が変更され、混乱を招いた

④兵器開発には科学・技術面での支持が不可欠
 それまでの製図→試作の流れから、
 必要な技術の開発、科学技術理論の作成、それに基づく試作とフィード
 バックといった合理的な研究開発の体制が中国で構築される端緒となる。

⑤国外からの技術導入と自国技術の育成のバランス。
 1979年、ラインメタル社会長が訪中、120mm滑腔砲と105mmライフル砲と
 砲弾に関する技術提供を申し出る。105mm砲については導入したが、120
 mm砲については開発中ということもあり購入せず。結果的には、120mm砲
 は開発失敗し、105mm砲が主力戦車砲となる。教訓としては、国外からの
 技術導入と自国技術の育成のバランスが必要。

この文章は、これまで不明であった120mm滑腔砲の開発経緯が明らか
にされた貴重な論考であるといえる。

ラインメタル系ともいわれていた120mm滑腔砲であるが、ドイツからの技術
移転は105mmライフル砲に限られていた事が分かった。砲弾のサイズや、
装薬の燃料効率など詳細なデータがわかったことも意義が高い。
今後は125mm戦車砲の開発史が公開されることを望む所である。

129 :名無し三等兵:2009/03/29(日) 10:35:00 ID:???
各国戦車砲とのスペック比較(記事で比較されたいた物をそのまま掲載)
【中国120mm滑腔砲】
口径:120mm、弾種:APFSDS、貫通力:204mm(68度)複合装甲、150mm
(65度)均質鋼板を3000mで貫通可能。、初速1698m/s、とう圧:常温465
Mpa、高温553Mpa、後座力:562kn、俯仰角-8~18度、砲身長5.75m(48
口径)、火砲重量3t、射撃距離2000m

【独120mm滑腔砲Rh-120】
口径:120mm、弾種:APFSDS/HEAT-MP、貫通力:NATO3重目標(10+20+
80mm、傾斜65度)均質鋼板を2200mで貫通可能。、初速1650m/s、とう圧:
550Mpa、後座力:600kN、俯仰角-9~20度、砲身長5.3m(44.1口径)、火砲
重量3283kg、射撃距離1800m

【仏GIAT 120mm滑腔砲type120】
口径:120mm、弾種:APFSDS/HEAT-MP、貫通力:NATO3重目標(10+20+
80mm)均質鋼板を3000mで貫通可能。、初速1750m/s、とう圧:630Mpa、俯
仰角-8~20度、砲身長6.24m(52口径)、火砲重量2620kg、射撃距離2000m

【英105mm ライフル砲L7】
口径:105mm、弾種:APFSDS/HEAT、貫通力:NATO3重目標(10+20+
80mm)均質鋼板を2000mで貫通。150mm均質鋼板(65度)を1540mで貫通。
初速1490m/s、とう圧:503Mpa、後座力:333.7kN、俯仰角-9~20度、砲身長
5.34m(50.9口径)、火砲重量1282kg、射撃距離1700m

【ソ 125mm半滑腔砲(砲身付け根にライフルあり)2A46】
口径:125mm、弾種:APFSDS/HEAT/HE、貫通力:150mm均質鋼板(60度)
、240~400mm(傾斜0度)均質鋼板を2000mで貫通可能。初速1800m/s、とう
圧:452Mpa、俯仰角-6~14度、砲身長5.24m(41.09口径)
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